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彩の国さいたま芸術劇場 |

音楽

【ピアノ・エトワール・シリーズVol.26】アレクサンダー・ロマノフスキーに聞く

2015.1.12


詳しい公演情報はこちらからどうぞ!

 

Q:今回は短い日本滞在でしたが、長崎の訪問はいかがでしたか?


アレクサンダー・ロマノフスキー(以下、AR):とても素晴らしい時間を過ごすことができました。1日しか滞在できなかったのですが、それでも、長崎で受けた印象は、とても素晴らしいものです。第一印象、って大切ですよね。とてもあたたかく受け入れていただき、ご一緒した方々との交流もとてもおもしろかった。今回は教育プログラムで、ある学校の生徒たちが中心となって今回の演奏会を作り上げてくれました。17~18歳の若者たちが、それこそチケットを配ったり、マスタークラスの参加者を募ったり… 長崎は大きな悲劇を受けた街です。と同時に、カトリック教会など、特異な歴史的背景のある街でもあります。今回は教会で演奏会を行ったのですが、とてもシンボリックで、長崎の街の雰囲気を感じ、歴史に浸ることができました。演奏会には1000人もの方々が集まってくれ素晴らしいコンサートになりました。子供たちの努力の結晶です。
 実は、若者たちを対象にした音楽啓蒙活動は、私が今、最も力を入れている分野の一つです。若い人たちに、もっとクラシック音楽を知ってほしい。知るためには、実際にふれてみる機会が必要です。そういう意味で、今回の長崎訪問はとても有意義なイベントでした。
 私の夢は、若い世代のクラシック音楽への視点や接点を変えていくこと。若者たちにもっと積極的にクラシック音楽に接していってほしいと考えています。その一環として、音楽コンクールがあります。実はウクライナでコンクールを開催する予定だったのですが、一連の政変で、それが実現不可能となりました。それを新たに、モスクワで開催することになりました。15年3月にモスクワで開く、「第1回 ウラジーミル・クライネフ 国際ピアノコンクール」です。12月下旬まで参加申し込みを受け付け、世界各地、東京を含め現在8つの都市でオーディションを行います。審査員は、各地へ飛び、実際に演奏を聞いて、合計20人の参加者を選抜します。その20人が3月にモスクワで、最初はソロプログラムを弾き、ファイナルに進んだ10人がスピヴァコフ指揮のオーケストラ伴奏で、協奏曲を演奏します。私はこのコンクールの責任者ですから、日本にも、オーディションで来日しますよ。


Q:その前に1月にリサイタルとNHK交響楽団との共演のために来日くださいますね。その時のリサイタルでは、前半にベートーヴェン、後半にショパンを演奏してくださいます。両極端ともいえる作曲家ですが、この二人を組み合わせた意図をお話しください。

 

AR:たしかに偉大な二人の大作曲家、両極端にも思えますが、私は全くそうであるとは思いません。1月のプログラムは、前半にベートーヴェンのドラマのあるロマンティックな作品を選びました。後半はロマンあふれるドラマティックな作品を選びました。つまり、ロマンティックとドラマティックを組み合わせたプログラムにしたのです。
  ベートーヴェンは、音楽を通して、何かを説明したい、自分のアイデアを伝えたいという“強い思い”を持ち続けていました。また、情熱に満ち溢れていた彼の心の中、その“内なる炎”を、抑えようという気持ちもあったような気もします。そのような二面性が、彼にはあったのではないでしょうか。
  ベートーヴェンの場合、「無意識が意識に先んじていた」という気がします。彼の素晴らしい魂も、楽ではなかった人生も、様々なものが音楽を通して伝わってきますよね。

 

Q:ベートーヴェンの作品は、好んで弾かれるのですか?


AR:言うまでもなく、私が最も好きな作曲家の一人です。決して数多くの作品を弾いてきたわけではありませんが、最近では《ディアベリ変奏曲》を録音しました。ソナタは、8~10曲を弾いています。

 

Q:その中で、今回は14番「月光」と30番のソナタを選ばれた理由は?


AR:ベートーヴェンのソナタの中でも、最もロマンティックなソナタで、後半のショパンと組み合わせるにふさわしいソナタだからです。「月光」の方は、ブゾーニのコンクールでも弾いた、私には思い入れの強いソナタでもあります。26番以降のソナタはレパートリーに入っていますが、いわゆる後期三大ソナタ(30番から32番)の中で、今回は30番を選びました。先ほども申しましたが、最近作品120の《ディアベリ変奏曲》を弾いているのですが、これは最後のソナタ作品111より後に書かれた作品です。《ディアベリ》は私の最も好きな作品の一つなのですが、この作品の中で、ベートーヴェンは“落ち着いた”と、私は感じるのです。ベートーヴェンの賢明さや経験はもちろん、人生の苦悩などすべてが、ポジティブにさえ感じてしまうほど、“悟った”というか、“落ち着いた”。嵐の後の静けさ、とでも言いましょうか。ソナタ30番でも、それに近い感じがあります。“闘い”なのですが、それは次なる希望、明かりへといざなわれる…。
 31番ソナタになると、これは「死」と「復活」ですね。

 

Q:ショパンについては?どのように感じますか?


AR:まず、ショパンはスラブ人作曲家ですから、それだけでも魂の近しさを感じます。もちろん、ショパンは比類のない音楽の言葉を持ち、思いを表現しています。そこが、ショパンがこんなに愛され“特別な存在”とされる所以ですよね。ショパンの作品の中では、たとえば嬰ハ短調のノクターンは、よくアンコールで弾いています。すごく好きな作品で、弾きたい曲の一つです。最近はアンコールで欠かさず弾いています。他にもソナタはもちろん、スケルツォ、マズルカなども多く弾いていますよ。
  そして今回はバラード2曲と、ソナタ第2番を弾きます。選んだ理由ですか? 特に理由はないのですが…。 まずソナタ2番は、プログラムに入れたいと思いました。プログラムを選ぶときは、まず「起点」となる作品を選びます。今回のプログラム(後半)では、それがまずソナタ第2番で、それを決めてから、一緒に何を弾くかを考えました。
プログラムを選ぶときに私が大切にしていることは、好きな作品、弾きたい作品、というだけではなく、“克服”する、ということを考えます。つまり、自分にとってために(勉強に)なるような、難しさを克服して新たなレベルに到達できるような、そんな曲を課題とするようにしています。それで2曲のバラードを組み合わせました。バラードは4曲とも弾きます。最初は1番と2番のバラードにしようかと思いましたが、結局、2番と4番にしました。
 ところで、2番ソナタは実は今シーズンになってから弾き始めた私にとっては比較的新しい作品です。日本で弾く機会を得て、とてもうれしく、わくわくしています。日本の聴衆の皆さんは、ショパンの音楽をとてもよく感じ、理解されています。その皆さんの前でショパンを弾くことは、楽しみでもありますし、大きな責任も感じます。

 

Q:ロシアの作曲家の作品を弾くことが多いと思いますが、今後の展望などをお聞かせください。


AR:演奏家に対して、特定の作曲家やレパートリーを“結び付ける”傾向は、最近特によく見られます。たとえば私もロシアの作曲家の作品をよく求められ、自分自身もラフマニノフは大好きですし、もちろん、ラフマニノフの音楽は私の人生の重要なパートを占めていると言えます。でも私は、もっとユニバーサルな演奏家になりたいと思います。もちろん、奏者一人一人に得意な分野があり、ほかの奏者にない解釈を見せることもできましょう。が、決して狭い範囲に限らず、より広範なレパートリーを目指すことが大切です。しかもただ範囲を広げるだけでなく、その分野を極めつつ、真摯に、深く、取り組むことです。様々な作曲家、時代、派などです。今はそのようなユニバーサルな奏者が少なくなっていると思います。
  私も、たとえばこれまでの録音は、ラフマニノフの他に、シューマンやブラームス、ベートーヴェンなど様々な作曲家の作品を取り上げてきました。グラズノフもあります。そうそう、最新のCDは、ラフマニノフの2曲のソナタを録音しました。1月の来日に向けて、日本でも発売されると思います。ラフマニノフのソナタは、「ロシアのファウスト」です。特に1番のソナタは、ラフマニノフは交響曲を書きたかった。それをピアノ・ソナタにしたのです。ですから、規模が大きい。リストのソナタのように、大きい。演奏時間も40分かかりますし、本当に大きな「音楽画」です。ラフマニノフは、ゲーテの詩曲を音に表したいというアイデアがありました。ファウスト、マルガリータ、悪魔などを音楽で描きたいと考えていました。しかしラフマニノフは標題音楽をあまり好まず、結局ゲーテの詩曲を基にした標題音楽は書かなかった。でも、モチーフは、ソナタの中に残っているのです。そのゲーテのモチーフが、ロシアの魂と折り重なって壮大なスケールの作品になったと考えています。

 

Q:日本のどこが一番お好きですか?


AR:日本は素晴らしい歴史を持つ、美しい国です。好きなところは数々ありますが、なかでも一番私が心を惹かれるのは、互いを尊敬する気持ちです。目上の人を敬う気持ち。回りの人を気遣う配慮。この点、日本は世界一だと思います。そのような日本の古来の尊厳が薄くなってきているという声も聴きますが、今の世界は価値観が大きく変わってきています。日本だけでなく、世界共通の問題でもありますね。日本の聴衆は、素晴らしいです。とても熱心に、演奏に耳を傾けてくれます。全身で聞いてくれる。また皆さんとお目にかかれることを、とても楽しみにしています。

 

Q:ありがとうございました!  来年1月を楽しみにしています!

(取材:2014年11月 東京にて 聞き手:株式会社ジャパン・アーツ)

 


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